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駅のホーム


 朝の駅--人、ひと、ヒト。自分の周囲五メートル以内に全体何人いるのか。数えるのすらバカバカしいほどの人のうねり。
 朝のラッシュの時間帯の駅には相変わらずうんざりする。
 人々の波に飲まれながら改札を抜けホームに並び電車を待つ。救いは電車の間隔が僅かなことだ。車内も鮨詰めで苦しいことに変わりはないが、乗りさえすれば、あとは到着を待つばかりだ。
 そんないつもの駅のホーム。と思ったら今日は少しばかり違っていた。
 電車を待つ隣の列に、超好み、ドストライクの女の人が並んでいた。同世代か?自分と同じくスーツ姿、おそらく社会人。
 理想の女性がそこにいる。どうしよう、じろじろ観ていたら不審がられる。・・・・・・だが目が離せない、釘付けだ。--これ、一目惚れ?
 あれこれ考えているうちに電車が駅に到着し、その女性も自分同様車内に吸い込まれていった。
 人の頭がずらりと目の前に乱立したが、なんとか彼女を見失わずに済んだ。鮨詰めの中、少しずつではあるが近くへ、彼女の近くへと人をかき分け進んで行き、ギリギリ不自然ではない距離で進軍を止めた。・・・・・・これからどうするか。まるでストーカーだ。
 考えろ。この後のこと。
 声をかける?全くの初対面なのに?
 見ているだけ?それが普通。だが、果たしてそれでいいのか?この広い東京、二度と会えることはないと考えるのが普通だ。
 葛藤。
 一生ではないにしても後悔は間違いなくする。判る。それほど彼女にはガツンときた。声を掛けないと後悔する。
 とりあえず車内で行動を起こすのはまずい。痴漢だと思われたら社会的に終わりだ。リスクが高すぎる。
 思考しているうちに二三駅を通り過ぎた。そして今扉が開いた駅。そこで彼女は降りた。--ええい!こうなったら今日は欠勤だ。溜まっている仕事はひとまず先週で片がついている。上司も(多分)許してくれるだろう。
 初めて降り立った駅はこの路線にしては比較的控えめな作りだった。
 いけない、知らない土地で彼女を見失えばオフィス街の場所すら見当がつかなくなってしまう。慌てて人の波の一部になっている彼女を探す。・・・・・・見つけた!
 ホームから階段を下り、改札を抜け西口に出る。
 彼女は早いペースで通りを歩いていく。ヒールなのに大したものだ。
 そろそろ行動に移さねばなるまい。彼女が会社に着いてしまえばそれまでだ。
 駅から人が散り散りになっていく。人の数が減ってきた。
 距離を縮める。・・・・・・ああ、これってナンパだ。初めてするな。ナンパ、キャッチを出来る奴はよく出来るな。自分には向いていない。だからこれが--最初で最後だ。

 「あの、すみません・・・・・・」
 「・・・・・・え!?私ですか?」
 彼女は足を止めた。すごい警戒をされている。当たり前だな。
 「あの・・・・・・、あのですね・・・・・・」
 「すみませんが、私、急いでいますので」
 彼女は警戒感を顕に、この場を離れたがっている。せっかく止めた足も再び動きだしている。
 「突然声を掛けてしまって申し訳ありません。ただ、駅であなたを見かけて。どうしても気になってしまったんです」
 「・・・・・・はぁ?」
 「だから、その・・・・・・あ、すみません!私はこういう者です」
 彼女に名刺を差し出す。
 困惑しながらも彼女は名刺を受け取ってくれた。
 「何もかもが突然で本当にすみません。通勤時、ご迷惑だったとも思います。だけど、もしよろしかったらそこに書いてある私の連絡先に連絡してください。名刺、必要ないのなら捨ててしまって構わないですから」
 早口で言うだけ言って彼女の返事を待たずに踵を返し、逃げるような駆け足で彼女から離れた。彼女には間違いなくおかしな人だと思われたろう。だがそれでもいい。
 自分の中にこんな積極的な自分がいるとは知らなかった。自己満足だが、よくやったぞ自分。


 その後については、語らないでおこう。
 ――自慢話になってしまう。

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テストの朝

 「う~」
 これで三日連続だ。テストの朝は決まってお腹を下してしまう。我ながら自分の腸の弱さが嘆かわしい、 ストレスにさらされるとすぐこれだ。
 いや、テストのストレスだけじゃないな。
 昨日のテストが終わった後、あいつ――有希子の思わせぶりの発言のせいだ。おかげで勉強が手に着かず、数学がかつてないピンチに陥っている。
 有希子の奴、一体どういうつもりなんだ「テスト終わっても教室から出ないで待っていて」とは。よりによって中学三年男子に向かって!この年頃でそういう発言を勘違いしない男子はいやしないぞバカヤロウ。
 本当にどういうつもりなんだろう。有希子とは小さい頃から家が近所で中学三年間はずっと同じクラスだった。もちろん、仲はすこぶる良い。だけど互いに恋愛対象としては見ていなかったはずなのだけど。
 せめて今日のテストが終わってから言って欲しかった、今日で三日間のテスト日程が終わるというのに最終日を待たずしてそんなこと言うなよな。
 マズった。今はそんなこと考えている場合ではなかった。これからテストなのに。僕は下痢止め(効果抜群)を飲んで急いで家を出た。
 幸い学校までの道のりはテスト勉強に集中できた。とはいっても所詮付け焼き刃程度になってしまったが。
 テスト前はもう駄目だと思っていたが、終了のチャイムが鳴り終わったときの感想は「以外に出来た」だった。
 ただし、数学だけは本当に終わった。五十点を切ることだけは確信できる。ここまでできないと妙に清々しい。
 テストは終わった。次だ、有希子の件だ。・・・・・・一応トイレに行っておくか。


 教室でぼんやりしているうちに、いつの間にか教室内は僕一人になっていた。
 僕一人?有希子もいないじゃないか。まさか騙されたのか?
 あの野郎、と思っていたところに有希子が教室に戻ってきた。
 「なんだよ、帰ったのかと思ったよ」
 「友達には忘れ物したって言って戻ってきた」
 「ふぅん、それで用って何さ」
 有希子がたじろいだ。
 「いきなり訊くんだね」
 「だってそれを言うつもりで僕のこと呼んだんだろ」
 「それはそうだけどさ・・・・・・」
 「それで何さ」
 「・・・・・・」
 「どうした?」
 「あたしね、転校するの」
 「え・・・・・・」血の流れが止まった気がした。「冗談じゃ」
 「ないよ」有希子は静かに答えた。
 「そうか・・・・・・いつ?」
 「二週間後」
 目の前が真っ暗になった。
 「急だな」
 「うん」
 「どこ行くんだ?」
 「そんなに遠くない、県内だよ」
 「それならっ」
 ――ここにも通えるんじゃないか?
 「片道二時間」
 僕の言いたいことを察して有希子は先回りして答えた。
 「二時間か、それじゃあキツイな」
 「うん」
 「そうか・・・・・・みんなには?」
 「言ってない。お別れ会とか開かれても嫌だし。だからみんなには内緒にしてて。ギリギリになったらあたしから話すから」
 「わかった」
 「アンタにだけは言っておきたかったんだ。小さい頃からずっと一緒だったわけだし」
 「そうか、ありがとな」下を向き床を見つめた。
 深く息を吸ってから顔を上げると、有希子がしゃくりだした。
 「おいっ、泣くなよ」
 「だって・・・・・・」
 あとは何を言っているのか聞き取れなかった。
 どうすることもできずに立ち惚けていることしかできない自分がもどかしかった。
 「そうだ。受験はどうするんだ?志望校も変えちまうのか?」
 ようやく落ち着き、鼻をすすりながら「変わらない」とズビズビ言いながら答えた「そこなら通えるから」と。
 「それじゃあさ、高校でまた会おうよ。それなら問題ないよ、半年もない」
 「アンタの頭じゃ無理よ」
 「そりゃ今のままならな。だけどこれから死ぬ気で勉強する、受かってみせるさ」
 「本番弱いくせに」
 有希子は僕がすぐお腹を下すことを知っている。
 「そこも治す」
 「本当にできるの?」
 「だからやってやるって」胸を叩いた。自信はないが。
 「それじゃあ約束して。今日から毎日三時間欠かさずに勉強するって」
 「三時間!?多すぎない?」
 「受かりたいんでしょ。アンタの頭じゃそれでもたぶんギリギリのところよ」
 「ひっでーな」
 「だって本当のことだもん。アンタの成績小学校の頃からずっと見てきたのよ?」
 「有希子が言うならたぶん本当なんだろうな・・・・・・わかった、約束するよ。毎日三時間勉強する」
 「欠かさず、ね」
 「わかったってば」
 「よろしい」
 いつの間にか有希子は笑顔に変わっており、僕は安心した。
 「準備とかいろいろ忙しいと思うけど、引っ越しするまで僕の勉強見てくれない?有希子教えるの上手いし」
 引っ越してしまうまでの間、少しでも長く有希子と一緒にいたいと感じた。長い時間を共に過ごしてきたせいなのか、有希子がいなくなると思うと体の一部が欠けたような気分になった。
 「いいわよ。だけどウチはごたごたしてて散らかってるから勉強はアンタの家でしましょ」 
 「僕の家か。別にいいけど久しぶりだよな。いつ以来だろ?」
 「小学校四年のときくらいだった」
 「そうかも。母さん喜ぶよ」
 「遊びに行くんじゃないんだからね。みっちり叩き込んであげるから覚悟しときなさいよ。アンタをあたしレベルにまで引き上げるなんて相当な骨よ」
 「覚悟しとく」
 「そう、それじゃ早速行きましょ」
 「えっ、今日からなの?」
 「当たり前じゃない、何言ってるの」
 「だけど今日はやっとテスト勉強から解放された日だからさ」
 「今回のテスト範囲も寝たらどうせすぐに忘れちゃうでしょ。忘れないうちにまとめときましょ」
 「勘弁してよ」
 「勘弁しない。あたしと同じ高校に入りたいんでしょ」
 「そりゃそうだけど・・・・・・」
 「なら今日からしましょ。あたしも勉強しなきゃ。余裕みせてあたしが滑ったら洒落にならないもの」
 「そりゃそうだな。よし、それじゃあウチで勉強しますか」
 「おー!」
 ようやくいつもの元気で明るく、ちょっぴり毒吐く有希子に戻ってくれた。
 

 家に帰る途中訊いてみた。
 「僕が有希子の志望校にいくって言ったとき嬉しかった?」
 「べっつに~?アンタの方があたしがいなくなるの知って寂しくなったんじゃないの?」
 「僕は寂しいなんて一言も言った覚えはないね。それに・・・・・・泣いたくせに」
 「――あれは!」
 僕が有希子の狼狽した姿を見てニヤニヤしていると、それに気が付いた有希子が冷たく笑った。
 「本当にアンタ覚悟しておいた方がいいかもね。泣いて許しを請うまで今日は徹底的にしごいてやるから」
 僕の背中に冷たい汗が一筋流れた。
 と同時に、有希子と二人で思わず吹き出してしまった。
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