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優しくてキレイな年上のお姉さん


 ――?
 彼女へ訊き返すと「キレイではなく綺麗」と注意された。僕が訂正した後の彼女の満足そうな笑みは確かに綺麗だった。

 「ユータロー、何か面白い話して」
 「遙先輩、それは無茶振りってやつです。それも毎日毎日、たまにはそっちからも提供してください」
 「いいからしてってば」
 「そんな……」
 結局いつものように僕の話は盛大に滑った。それを見て遙先輩は笑う。
 女性はしばしば男性に面白い話をしてくれと頼むことがあるが、それは無茶な話だ。僕たちはお笑い芸人ではないのだ。ウケるネタなどそうそう持ち合わせていない。いわんや毎日なんて!お笑いブームが持つ負の一面なのだろうか。
 そんな遙先輩ではあるが僕は彼女に惚れてしまっている。一目惚れといった運命的なものではなく、気がついたら虜になっていたというパターンだ。だからこそ打率は低いがこうして毎日健気に遙先輩の無茶な要求に応えているのだ。
 当然ながら僕の想いは遙先輩にぶつけていない。彼女は四年生、僕は一年生。一般的に考えれば可能性は低い。それでも年齢の上では僕は一年浪人生活を送ったので二つ違いだ。そう考えればまだ希望はあるように思えた。
 「それじゃあたし午後からゼミだから行くわ」
 「それなら僕も行きます」
 「あれ?ユータローこの時間のゼミに参加するっけ?」
 僕と遙先輩が所属する教授のゼミは各学年漏れなく生徒が清々しくなるほど少ない。そういった理由でゼミには学年単位で行うものと全体で行うゼミが週に一度ずつ用意されていた。教授も忙しいはずなのによくやってくれる。ただ、僕を遙先輩と巡り会わせてくれたので文句は言えなかった。
 「別件です。レポートがあるんで図書館に行ってきます。ここじゃ無理ですから」
 今僕たちがいる場所は大学の経済学部棟の隅にある一室。当初は学生達の自主勉強に使用されるのが目的で作られたらしいのだが、今ではすっかり学生達の談話室と成り果てていた。
 「あっそ」
 興味なさそうに応えた遙先輩に多少凹むが、よく見ればどこか笑いを我慢している表情だった。しょんぼりする僕を完全にからかっているのだ。
 「遙先輩はゼミ終わったらどうしますか?」
 「何もないから帰る」
 「バイトですか?」
 「今日はシフト入ってないけど」
 「それならレポート教えてくださいよ。遙先輩も履修したやつだと思いますから」
 僕は講義名を教えた。
 「え~、それ面倒なやつじゃん。あたし成績ギリギリの可だった記憶ある」
 「そこをなんとかお願いします。遙先輩優秀じゃないですか、春からは大学院に行くわけですし」
 大学院にまで進級すると聞いたときの喜びようといったらない。てっきり社会人になって学び舎からは卒業するとばかり思いこんでいた。
 「何度も言ってるけど、あたしが院に行くのはほとんど逃げなんだからね?働きたくないだけだから」
 「そんな謙遜しないでくださいってば。この前教授が褒めてましたよ。君たちの先輩にはすごいのがいるって」 
 「褒めてるのか貶しているのかわからない喩えね……まぁいいわ、ユータローのヨイショに乗ってあげる。ちょっとくらいなら見てあげるわよそのレポート。もっとも覚えていたらの話だけど」
 「見てもらうんじゃなくて教えてもらいたいんですけど……」
 「甘い!角砂糖くらい甘いね、頬が落ちるわ」
 遙先輩は自分の左頬を指で下に伸ばした。
 「先輩に教えてもらうことは許容範囲じゃないんですか?」
 「あたしは無糖派なの」
 遙先輩がコーヒーの無糖が好みだということは当然知っています。とは引かれる発言だとわかっていたので控えることにした。
 あたしのゼミがあるまでせいぜい図書館で本とにらめっこしてなさい、ニヒルな笑みを浮かべ去った遙先輩の言いつけ通り僕は彼女のゼミが終わるまでの九十分間集中してレポートを進めた。進めたはずだった。
 「何これ?あたしでも書き写しだって一目瞭然よ?」
 僕のレポートは一瞥されて机に放り出されてしまった。
 「しょうがないですよ、講義出てないから内容わからないですもん。書き写す他ないですよ」
 「言えた口じゃないけど講義はちゃんと出席したほうがいいよ」
 「お言葉ですけど、この内容の講義を出なかったのは遙先輩のカラオケに付き合わされたからですよ?」
 「あれ?そうだっけ?」
 「勘弁してくださいよ」
 「ごめんごめん。だけどあんまり小さいことを気にしてたら禿げちゃうよ?」
 「やめてくださいよ!気にしてるんですから!」
 「それじゃあ終わったことにクヨクヨせずにレポートをやっつけちゃおう。うる覚えだけどあたしがちょこちょこ修正したらそれでもある程度形にはなるでしょ」
 そこからの遙先輩は早かった。さすが大学院に進むことだけはあるといった感じだ。そして集中している遙先輩の横顔は僕の好きという色眼鏡を抜きにしても綺麗だった。いつもと違う表情、これもギャップの一つか。
 「終わりっと。文体もレベルも合わせたつもりだから他人にやってもらってことはバレないと思う」
 パソコンから印刷されたレポート用紙を僕に渡した遙先輩は一仕事終えた清々しい顔をしていた。喫煙者ならばここで必ず一服だろう。
 「ありがとうございます。このお礼はいつか必ず」
 「いつかなんて言わないで今してよ。ほら行くわよ」
 「帰るんじゃないんですか?」
 「そんなこと忘れた!」
 「マジっすか」
 困惑したが、嬉しいことに変わりはない。

 「最近僕のことよくかまってくれますけどいいんですか?四年生同士で遊んだりしなくって。最後じゃないですか」
 最寄りの繁華街まで連れてこられた僕は気になっていたことを訊いてみた。我ながら怖い質問だ、自分で遊んでくれるなと頼んでいるようなものだ。
 遙先輩は僕の顔を見ずスタスタ歩きながら答えた。
 「なんかね、あたしの同期はみんな来年から社会人でしょ?だけどあたしはまだ学生のまま。微妙なんだよね」
 「距離とられちゃったんですか?」
 「そんなわけないでしょうが。あたしの友達はみんなそんな人たちじゃないわよ。むしろあたしが距離空けちゃったのかな」
 「どうして。なかなか会えなくなっちゃうんですよ?」
 「そりゃ卒業前はとことん遊ぶわよ。だけど今は就活終わって最後に遊ぶためのバイトで忙しいみたいだから別にいいの。はい!この話はこれで終わり。それより今日はとことんだからね」
 「またカラオケ、飲みの流れですか」
 「嫌?」
 「もちろん大歓迎です」
 「それなら黙って付いてきなさい」
 「オーケー、ボス」
 「変な言い方禁止」
 カラオケに居酒屋。その通りの流れになったのはいいが、悲しいかな、僕の理想とするシチュエーションにはほど遠い騒がしいものであった。そしてそのままこの日は終了した。
 遙先輩は弱さをまるで見せてくれない。攻めるべき点がが皆目見当がつかない。


 僕は焦っていた。夏休みが刻一刻と迫って来ているのだ。本来なら両手を広げ迎え入れるそれだが、今回はそうは問屋が卸さない。大学に行かないのなら遙先輩と会うことにいちいち理由づけをしなくてはいけなくなってしまう。夏休みまで残すところ二週間、どうにか決着をつけよう――と、今すぐ行動に移したいのは山々なのだが、いかんせん我々学生には同時にテストが待ちかまえる時期。こればかりは手を抜くわけにもいかなかった。遙先輩も講義ならまだしもテストすら真面目に取り組まない奴は嫌いだと気を吐いていたからだ。
 そうはいっても遙先輩とは少しでも会いたい。苦肉の策で僕は勉強を乞うことにした。遊び抜きの堅い文面でメールを送信してみる。
 『自分でしなさい』
 なかなか手厳しい。それでも僕は「何卒」と再度試みてみる。
 『あたし前期のテストってないから大学に行かない。早めに夏休み満喫してる』
 「夏休み」この文面を見て僕は自分が阿呆だと痛感した。ここは大学、学生の夏休みが一斉にスタートとなるわけではもうないということを僕は失念していた。
 少なくとも僕自身のテストが終わる二週間は遙先輩と会うことはできないわけだ。
 その後そのまま図書館で勉強を始めた自分は褒められるべいなのか貶されるべきなのか。落ち込みながらも黙々と机に向かいわかりづらい教授自筆の本と数時間格闘していると、後ろからスッと腕が伸びてきた。図書館という環境を加味しても我ながらよく驚きの声をあげなかった。振り返ると無言で笑う遙先輩がそこにいた。
 「ユータロー驚きすぎ」
 「どうしたんですか?メールでは夏休みって言っていたじゃないですか」
 声を落とように努めるが、気持ちがどんどん上向きになっていく。
 「動揺してる、ユータローはかわいいなぁ」
 「それはいいですから、僕の質問に答えてください」
 「ユータローの顔が見たくなった。これじゃダメ?」
 しばらく会わないようなメールで落ち込んでいた後にこれだ。冗談だとしてもこの落差はずるい。
 遙先輩は別件を済ますために大学に来たということで、さっさと図書館を去ってしまった。自分は振り回されているなあと感じながらも、その後の勉強は大いにはかどったので悪いことではないのだろう。

 テストの山場も過ぎ残す科目もわずかという頃、僕の感情に問題が生じた。遙先輩への気持ちが冷めてきてしまったのだ。いや、疑問を持ってしまったが正しい言い方だろうか。
 原因はわかる。試験科目の一つにあった一般教養の心理学だ。詳しい内容は省くが、要するに人の感情には雪だるまのように一度転がると止まらずに大きくなっていくことがあるらしい。これを僕は己の遙先輩への感情に当てはめてしまったのだ。単位を取るのが楽だと聞いて何も考えずに選んだが、こんなことになるのなら履修しなければよかった。失敗だ。しかし雪だるま式の心理というのはよく言ったものだと納得してしまう。遙先輩のこともそうだが、心理学の講義に対する後悔も現在止まることなくゴロゴロと増幅している。他にも過去のことで思い当たることがチラホラある。と、過去の出来事を消化しながらも遙先輩への好意は勘違いではないかと僕の心にはすっかり靄がかかってしまった。そういえば遙先輩からのメールの類はこのところ途絶えている。良く捉えれば僕がテスト期間だからと遠慮してくれているのかもしれないが、実際のところは夏休みに入り僕のことなどどうでもよいのだろう。――まずい、これも雪だるま式というやつか。


 最後のテストが終わり三日が過ぎた。僕もすでに夏休みに入っている。
 遙先輩からの連絡は未だに来ない。ならば自分からとも考えてみたが、そうするとまた勝手に気持ちが膨れ上がりそうで控えていた。
 その日、外の暑さも重なり日が暮れた頃になっても僕はひとり部屋で悶々としていた。思春期や青春といった特有の病気だろうとはわかってはいるがいかんともしがたかった。遙先輩に打ち明ければ笑い転げるだろうなとぼんやり考えていると、ベッドに放り投げられていた携帯電話が音をたてた。着信音はメールではなく電話を知らせている。飛びつくと待ちに待った彼女の名前がそれには映っていた。――待て、僕は冷めたんじゃなかったのか?それがどうしたこの高鳴る気持ちは。
 混乱したまま電話にでる。
 「もしもし?」
 『ユータロー?久しぶり!テスト終わった?』
 「とっくに終わってますよ」
 『あれ、本当に?なんだ~それなら早く連絡してくれたらよかったのに。あたし待ってたんだから』
 靄は晴れた。好きだ、勘違いでもなんでもない。
 久しぶりの声に無性に安心し、同時に自己嫌悪も覚える。これほど好きなのにつまらないことに惑わされてしまっていた。
 遙先輩への想いをしみじみと実感していると『聞こえてる?お~い』と彼女の声に呼び戻された。
 「大丈夫です。聞こえてます」
 『そう?あのさ、テスト終わったのならお酒飲もうよ。打ち上げってことでさ』
 「いいですね。しばらく飲んでませんし最近暑いですからね」
 『だよね!この上なくビールが美味しいと思うんだ』
 「うわあ、今から飲みたくなってきました!いつにしましょうか?」
 『今』
 「え?」
 『だから今から飲もうよ。あたしの家の近くにあるお店あるでしょ?そこに今から来て。ダッシュね』
 唖然とする。しかしこれこそが僕の惚れた人、本来ならば呆れたり怒る場面だろうが、僕の胸は高鳴るばかりだ。
 「わかりました。十分で行きます」
 通話はそのままに僕は準備に取りかかった。
 『本当に走ってくるつもり?』
 「もちろん。タイミング良くビールが運ばれてくるように調整しておいてください」
 『走るのは冗談のつもりだったけど、ユータローがそこまで言うのなら止めない。熱中症には注意するように』
 「了解」
 すでに靴紐は堅く結んだ。
 『なんだか嬉しいな、あたし淋しかったんだからね』

 遙先輩に都合良く踊らされ振り回されていることは重々承知している。それでも電話の最後の言葉は遙先輩の本音だとわかる。それだけの時間は一緒に過ごした。
 日は沈んでもアスファルトはまだまだ熱を帯びている。熱に浮かされた自分にはちょうどいいかもしれないなと思いつつ一歩目、僕は地面を思い切り踏みしめた。 
 

  
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明日こそは

明日には稚拙ではあるが小説を一本あげたい。

ここしばらくのスローペースはまずい。ペースをあげるには自分なりの〆切をせっていしないと難しいのかなぁ。

とにかく明日一本。まずそれから。


これを読んでくださった方、お時間あれば読んでみてください。


ブログ アクセス 急上昇

この4日くらいにブログアクセスが急上昇している。 なんでだろう?? 

twwitterのつぶやきのおかげか別の何かだろうか・・・全然更新もしていないのに悪い気がします。



話変わって最近は暑さにもようやく慣れてきて結構充実している。特に休日がアクティブ!

このままを維持したい。そのためにも体力UPが必須。筋トレせねば!



さらに別のこと。

新渡戸稲造の「武士道」を最近読み始めた。 面白いです。というか小手先の技術なんかより数倍ためになる。
知識だけにしないで実践することができたら世界がだいぶ変わって見えると思う。いざ精進。



追記
 わかった!! 金曜ロードショーの『サマーウォーズ』の影響だ多分。


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