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俺は中一、彼女は小一 1

 大学四年生の夏休み、それは理系ならまだしも文系は暇でしょうがないものだ。就職活動も企業様から無事内定をいただき終了し、卒業論文もまだ焦るような時期ではない。バイトに精を出すにも彼女がいないから金はそれほど必要ない。週四回シフトに入れば一人暮らしでの生活費は十分だ。
 俺もそんな世間一般の一人暮らしの大学生の例に漏れず、今日から始まる学生最後の夏休み、約二ヶ月という長い長い時間とどう付き合うか悩んでいた。
 これほど長い休みは社会に出たら二度と出会うことはない。だからこそ大切に、後悔することのないように思い切り楽しみ遊びつくせ――人生の先輩たちは示し合わせたかのように口をそろえる。……だが具体的に何をすれば?肝心な事を先人たちは教えてくれない。
 
 暑っちぃ。七月でこれなら八月はどうなってしまうのかというくらい夏休み初日は暑い日となった。
 しかもさっそく暇だ。バイトのシフトも今日は入っていない、友人と会うにしてもこの暑さではダレるだけだ。かといって蒸し風呂状態になりつつあるこの下宿でごろごろ過ごすことはほとんど苦行になりつつある。もちろんエアコンなんて気の利いた文明の利器はない。買えないこともなかったが、この下宿に住んで早四度目の夏、節約のため今まで耐え抜き買わずに粘ったのだから最後の夏のためだけに買うなんて贅沢は許されない。春からは社員寮に住むのだから部屋に金を掛けるとしたらそちらに移ってからだ。
 「……ファミレスかな」
 読みかけの文庫本と長袖のシャツを鞄に放り込んで、俺は紫外線が目視できそうなほど眩しい外へ出た。
 鼻頭に汗が浮かぶ、ファミレスまで距離はありがたいことにそれくらいだ。それでもドアを開けたときには涼しさに笑顔がこぼれた。が、それは一人でにやける変な男でしかなかった。
 夏休み初日から大学は論外。
 近所の図書館も捨てがたいが飲食厳禁はいただけない。それに自分が集中するときは大歓迎なのだが、リラックスしたいときにあの静寂は困る。うっかり伸びもできない。
 喫茶店は値段設定が反則だ。コーヒー一杯に三百円も払ってたまるか。
 それに比べてファミレスは――
 ドリンクバーを考案した最初の店は偉い。一人でも友人とでも時間を潰すのにこれほど最適なメニューは俺の知る限り存在しない。もちろん値段でも肩を並べるものはない。はっきり言ってしまえば至高の存在である。
 「いらっしゃいませ」
 「おひとり様ですか?」
 「おタバコはお吸いになられますか?」
 決まり文句に「禁煙席」を告げテーブルに案内された。席に座り、おしぼりで手を拭き、メニューを開く。一通り眺め――注文は決まっているが何となく――呼び出しボタンを押す。普段と何も変わることのない流れるような動きは、もはや自分の中での作法だった。残りの注文で作法は締めだ、が、ぶち壊された。

 笑顔のかわいい子だな。これが彼女への印象だった。
 好きになるまでの時間は掛かるほうだ。そのせいでいくつ涙を飲んだかわからない。しかし、たとえ業務用でもかわいい笑顔を浮かべ注文を受けにきたアルバイトに俺は間違いなく惹かれていた。
 「あの……、ご注文は?」
 「――っ、えっと!」
 慌ててドリンクバー、ついでにポテトを注文する。
 「ご一緒にデザートもいかがですか?」
 結構です、という言葉を彼女は俺の脳内辞書からすっかり忘れさせた。気づけばアルバイトの彼女がデザート込みの注文を繰り返しており、俺は曖昧に「はい」と答えていた。

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