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流れ星のおまけ付き 1

 俺の心は山道をひた走るこのバス同様、右へ左へと大きく揺れ動いていた。
 貸し切りバスの車内、春休み突入直後の二月、同じサークルに所属する我ら一行は冬合宿の舞台となるスキー場へと向かっていた。
 そのバスの車内、窓際の席に座る俺は外を眺めながら物思いに耽っていた。
 ――ひとつ下の後輩、森崎麻美。
 冬休み中、俺は森崎に「好きだ」と告げた。そして想いは届いた。想いを告げたそのとき、森崎は天使のような微笑みを返してくれた。今思い出しても森崎のかわいさに悶え死にそうになる。あの日、俺は日記を書く習慣なんて全くないのに、嬉しさをノート三ページに渡って書き連ねた始末だった。後日読み返したところ、あまりの己の気持ち悪さにポエムにも似た日記は永久に封印しようと即決した。
 こうして森崎は恋人となり、俺の部屋のカレンダーにはその日付に記念日としてグルグルと赤丸が付いている。
 ――ただ、その後の進展が全くありません!
 恥ずかしながら手もつないでいない。その兆しすらない。
 しかし、付き合い始めてまだたったの一月半、森崎にがっついていると思われたくないつい後怖じしてしまう。
 格段に親しくなった、とは自惚れでなく思う。それこそ恋人のように。だが焦って嫌われてもしたらどうする?何しろ俺は(記憶から抹消してしまいたいが)過去に焦って失敗した苦すぎる経験がある。だから森崎からなんのサインもないことが俺の不安を掻き立てる。そのせいで本来なら「夢のようだ!」と浮かれ飛び跳ねてよいはずの日々に引っかかりを感じてしまっている。
 果たして森崎はどう思っているのか。正確には――キスしてもいいと思ってくれているのだろうか。
 好意は、あるはず。俺の告白に応え、彼女になったのだから(依然変わらず素っ気ないのはデフォルトだ)。それでも……まだ早いのか?
 心があっちへこっちへ、一喜一憂が繰り返される。
 次(キス)に進めず不安になるのは俺自身に原因がある。俺がはっきりと言葉で、行動で示していないせいだ。……だって、森崎に拒絶されてしまうことはやっぱりどうしようもなく怖い。
 「どうした?ぼんやりして、酔ったのか?」
 ひとり悶々としていると、隣の席に座る福島がのぞき込んできた。俺と同じくこいつも二年生だ。
 「うん?そうだな、酔ったのかもしれない」
 とっさに俺は車に酔った振りをした。
 「大丈夫か?この山道じゃ無理もないかもしれないけど、頼むからバスの中で、つーか俺の隣で吐かないでくれよ?もらいゲロだけはしたくないからな。袋、用意しておけ」
 「吐くことはないと思うけど・・・・・・わかった。だからそんな顔するな。用意だけはしておくから」
 福島の警戒露わの表情に、仕方なく俺は前の座席の背中に備え付けてあるネットから袋を取り出し広げた。
 本当は車酔いなんてしていない、だけど福島にそう思わせた表情の曇りが森崎で悩でいたからだとは言えない。話せる訳がない。森崎はさりげなく一つ前の席に座っているから聞こえてしまう可能性もあるし、それ以前に森崎との関係は二人だけの秘密なのだ。

 (秘密?)
 (そうです。わたしたちのこと、他の人たちに知られたくないんです)
 (そうなの?俺は拡声器使ってみんなに宣言したいくらいだけど)
 (冗談でもそんなこと言わないでください。いいですか?絶対にやめてくださいよ)
 (少しは本気なんだけど・・・・・・。ホントに誰にも言ったらいけないの?)
 (そうです。お願いします)
 (わかった。けど、どうして?)
 (あれこれ訊かれるのもイヤですし、恥ずかしいんです)
 (たしかに訊きたがる奴は多そうだもんな)
 五人はすぐに頭に浮かんだ。
 (それに……『先輩とだけの秘密』にしたいんです、それじゃ理由になりませんか?)

 思い返してみると純粋に知られるのが恥ずかしいだけで最後の言葉は俺を乗せるための策略だったのではと思ったりもするが、そんなとき、二人だけの秘密にしたいと惚れた相手に言われてそれでもごねられる奴がいたらお目にかかりたい。まず不可能だ。
 俺としても森崎との今の微妙な関係を他の連中に波風立ててもらいたくない。森崎のほうも自分の恋愛事情は少しも知られたくないらしい。
 秘密を通しているので俺たちのことに感づいている奴はこの場にいないはずだ。いたら驚くよりもむしろ感心する。みんなといるときの森崎の俺への態度は以前に増して素っ気ない。いや、そのことがもしかしたら逆に怪しまれる要素になっているのかもしれない。俺も最近みんなの前ではあまり森崎に話しかけていない。どうしよう、急に不安になってきた。バレてないよな……?
 しかし普段素っ気ない分その反動で二人きりになったときに時折見せる森崎の態度には参ってしまう。正直降参だ。
 だからこそ焦って森崎との関係が壊れでもしたら……立ち直れる自信は無い。立ち直れても残りの大学生活はおしまいだ。
 だから怖くて行動できない。今のままで十分じゃないかと無理矢理自分を納得させてしまう。 
 「だけどこれじゃあ生殺しだよ」
 「何が生殺し?」
 「なんでもないよ」
 小さなことでも拾ってくれる福島のきめ細やかさが、ここではうるさかった。
 「まぁいいけど、もうすぐ着くみたいだぞ。スキー場まであと五キロだって。いやはや、今年の合宿は楽しくなりそうどすな、おまえはん」
 「何のキャラだよそれ」
 真剣に悩んでいた分くだらなさに思わず吹き出した。
 それもそうだ、悩みはひとまず忘れて合宿を楽しもう。夏と冬の合宿は年間の二大イベント、来年は就職活動で参加できないし、思う存分楽しんでおかなければ大損だ。


                                       続くです

COMMENT

新シリーズ1話目ごちそうさまです。笑

最初の主人公の行動がツボでしたwもうこの時点で主人公の魅力がすごい!
ホチさんの描く主人公たちは、もの凄く応援したくなるというか、読み手に愛されるポイントを上手くついてるというか。
惹きこまれた状態で森崎さんへの想いと悩みが語られる訳で、こしょばゆいにやにや状態になってしまいました。

キーマン?福島くんとの掛け合いも面白いです。以後もかなり笑わせてくれそうじゃないですか・・・!!

続き楽しみに待ってますねー!

2010.02.13| URL| 黒目 #- [編集]

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2010.02.13| | # [編集]

黒目さん感謝!

黒目さん、コメントありがとうございます!
1の段階でコメもらえるなんて夢にも思ってなかったのでテンション上がります^^

> ホチさんの描く主人公たちは、もの凄く応援したくなるというか、読み手に愛されるポイントを上手くついてるというか。
嬉しいです!……だけどそれはまだこういう主人公しか書けないってことでもありましてorz
 今後色々なキャラに挑戦していくつもりです!?

> キーマン?福島くんとの掛け合いも面白いです。以後もかなり笑わせてくれそうじゃないですか・・・!!
どうでしょう(汗)

4か5で完結するので、最後まで付き合ってもらえると嬉しいです。それはもう天にも昇るように。

2010.02.13| URL| ホチ #- [編集]

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