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流れ星のおまけ付き 2

 スキー場近くの宿の前に足を下ろせば、足跡が雪にくっきりと残る一面の銀世界がそこには広がっていた。
 「やっと着いた。片道三時間はさすがにキツかったな」福島が体を伸ばす。
 「俺は尻が痛い」尻がカチコチだ。
 「それじゃあまずは部屋の確認するから。滑るのはそれからな」
 ブッチョン(部長のあだ名だ)の指示に従い一行は宿を目指す。前を歩く森崎にザクザク雪音を鳴らして追いつき、俺は彼女に本日初めて声を掛けた。
 「もーり崎っ、どうよ?初めての冬合宿は」
 「夏と違って三年生がいませんからね、夏とは感じがだいぶ違います」
 「三年生は就活中だからな、けど大丈夫。今年は俺たち二年生に任せなさい」
 「そういう意味ではすごく不安です。すぐ羽目を外しちゃうから先輩の代は頼りないですし。わたし夏合宿みたいなのは嫌ですよ」
 「夏の話はよしてよ。俺たちも反省してるんだから」
 「反省活かしてくださいよ?酔い潰れた先輩たちの面倒看るの、わたしはもうイヤですよ」
 「わかってる、同じ轍は踏まないって。それに今回は夏と違ってたったの一泊だから大丈夫だろ」
 「頼みますからね」と念押してから森崎は話題を変えた。「それはそうと先輩の具合は大丈夫なんですか?バスで大人しかったですけど調子悪いんですか?」
 「もしかして俺のこと見てたの?気にしてくれていたんだ!?」
 「違います」キッパリ。「別にそういうわけじゃありません。とにかく、大丈夫なんですか?」心配そうに森崎の眉間に小さく皺が寄る。
 「心配してくれてありがとな。だけど大丈夫、ちょっとバスに酔っただけだから」
 君のことで悩んでいました、なんて言えるものか。
 「ならいいんですけど……、うるさすぎるのも迷惑ですけどお調子者の先輩があんまり静かだと違和感あるますよね」
 「そうか、森崎にそう言われちゃ仕方ない。テンション上げていこうかな!」
 俺はしゃがみ込んで雪玉を作り、先頭を歩くブッチョンの後頭部めがけ放った。ちなみにブッチョンはそういうノリに極めて寛大だ。それもあって彼は部長に任命されたわけなのだから。
 「おまっ、テメー!」
 こうして重い荷物を持ったままでの宿まで駆け足緊急無差別雪合戦が開幕した。
 肝心の森崎はというと、ため息をつきながら参戦することもなくさっさと宿に入ってしまった。あれ?お調子者の役目を果たしていると思うんだけど、もしかしなくても求められたのはこういうことじゃなかったの?

 宿の部屋割は大雑把に。学年、男女にそれぞれ分かれて眠る四部屋と、メインとなる宴会場だ。四部屋は力尽きた者たちの棺桶に過ぎない。
 「スキー板やスノボー、その他諸々は宿の方々が用意して下さってるから準備終わった人からスキー場に順次向かえ。ひとまずスキー場に集合、そしたらあとは自由行動だから。昼飯も好きなときに食え。それと貴重品は各自しっかり管理しておくように」
 ブッチョンの説明にテンション高めの低い声と高い声が混じって返事をする。
 俺も急いでレンタルのスキーウエアを着込む。小、中と雪国で過ごした俺は、スキーは中学二年生以来(三年生は受験でそれどころではなかった)だから六年振りだ。おぉ、結構ワクワクしている自分がいるじゃないか。滑れる奴の七割はスノボーを選択したが、俺はスキーを選んだ。スキーよりスノボーの方がカッコイイ、女性にモテるという風潮があるが、個人的には納得しかねる。安定性もスピードもスキーの方があるのだ。若人よ、スキーをしようではないか。
 「何ブツブツ言ってんだ?先行くぞ」
 俺の後ろをブッチョンが通り越した。
 「ちょっと待ってよ。お、ブッチョンはスキーか!感心感心」
 「とりあえずな。明日はスノボーに挑戦してみる」
 「そっか、その手もあるな」
 「普通に思いつくだろ、お前って頭堅いのな。コレとなったらコレしかない」
 「しゃーねーだろ、性格なんだし」
 「直そうと思わないのか?」
 「実を言うとかなり直したい」
 「石頭だから厳しいだろうよ」
 笑うブッチョンは先に玄関口へと出ていった。
 「待てと言ってんのに」
 俺もスキー靴をガチャガチャ鳴らしブッチョンの後に続いた。

 寒いのは当たり前だが、天気は快晴。むしろ雪に太陽の光が反射して眩しいくらいだ。それでも絶好のスキー日よりと言えた。
 滑れる人、全くの初心者。大体半分ずつになったので、滑れる人が二グループに分かれ教える側とひたすら滑る側を交代で行うことにした。
 俺と福島はまずは滑りに行くことになった。
 「福島はスノボー出来るのか?」
 「あったぼうよ。北海道育ちを舐めるなよ。スキースノボーなんでもござれっての」
 「あれ?東京育ちって言ってなかったか?」
 「実は人生の半分は北海道でした」
 「俺のこと散々田舎者とバカにしてたのにか」
 「気にするな。さぁ行くぞ!」
 ここで責めてもしょうがないか。北国育ちの同士ということにしておこう。
 「見せてもらおうか、北海道の実力をやらを」
 そう言って俺がリフトへ滑り出すと、「平らなとこだとスノボーは不利だ」と福島が後ろで嘆いていた。
 肩慣らしに初級コースを滑りだすと、スキーの楽しさをみるみる体が思い出してきた。寒いのだけれど体の芯は暑い感じ。隣を滑る福島も同じなのだろう、どんどんスピードを上げて俺から離れていく。確かにかなり上手いようだ。
 下の方で初心者組を見つけた。なんてかわいらしいんだ。斜面をえっちらおっちら登っている。そこを目標に俺もギアを換えてスピードを上げた。みるみる近づき、何人かは俺に気がついたようだ。あぁ、羨望の眼差しというものはなんと気持ちがいいのだろう。いつもバカやって笑われているだけに一段と嬉しい。どうだ、俺はやれば出来る子なんだぞ!
 ズシャッと体をひねって集団の前に止まる。この感じが俺は大好きだった。
 「先輩、すごいですね!」
 「もっと言ってくれ!」
 「先輩!すごいです!!」
 「ハハハ!ざっとこんなもんよ!」
 一通り褒められると、このグループの指導役のブッチョンが頼んできた。
 「ちょっと予想以上に教えるの大変なんだ、二、三人面倒見てやってくれよ」
 えっ、もう少し滑ってからにさせてくれ--と思ったが、教えを受けている中に森崎がいた。いいところを見せられるチャンス、断る訳がない。
 「いいよ、任せろ」
 「頼むわ」
 当然森崎はこちらに加えさせてもらった。
 女子ばかりじゃねーかという批判は、森崎を怪しまれずに獲得するためだ、甘んじて受けよう。


                                   まだ続くです

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